塩ビシートの熱伝導率は?厚み差と素材・空気層による断熱効果

塩ビシートの熱伝導率は?厚み差と素材・空気層による断熱効果

公開日:2026年10月24日 / 更新日:2026年10月24日

軟質塩ビシート(PVCシート)は熱を伝えにくい材料ですが、工場や倉庫の間仕切りでは、シート自体の熱伝導率だけで暑さ・寒さ対策の効果は判断できません。

間仕切りカーテンでは、暖気と冷気が直接混ざるのを防ぐことも重要で、必要な強度を満たしていれば0.3mmのPVCシートでも十分に効果を発揮します。

熊谷 熊谷
断熱というと、厚いシートほど効果が高いイメージがあります。0.3mmでは薄すぎませんか?
川畑 川畑
シートそのものの断熱性能だけを見るなら厚い方が有利です。ただし間仕切りカーテンでは、暖かい空気と冷たい空気を直接混ぜないことが重要です。その目的なら0.3mmでも十分に役割を果たします。
この記事のポイント
  • 熱伝導率は、素材そのものの内部を熱がどれだけ移動しやすいかを表す
  • 暖まったシート表面から周囲へ放射される熱は、熱伝導率ではなく表面温度や放射率の影響を受ける
  • 間仕切りカーテンでは、シートそのものの断熱だけでなく、暖気・冷気の移動を抑える効果が重要
  • 同じPVCなら0.5mmは0.3mmより材料熱抵抗が約67%大きいが、両方とも薄膜であることには変わりない
  • 0.3mmでも、必要な強度と納まりを満たして空間を適切に仕切れば、間仕切りとして十分な効果を期待できる
  • 耐熱性と熱伝導率は別の性能であり、高温に耐えられる材料ほど断熱性が高いとは限らない
  • 発泡材や二重構造では、熱伝導率の低い空気を利用することで材料・構造全体の熱抵抗を大きくできる

塩ビシートの熱伝導率の基礎知識と物性値

塩ビシートにおける熱伝導・対流・輻射の違い

熱伝導率は「素材の中を熱が通る性能」

熱伝導率λ(ラムダ)は、材料内部を熱がどの程度移動しやすいかを示す物性値です。単位にはW/(m・K)を使用し、数値が小さい材料ほど熱を伝えにくいことを意味します。

一般的なポリマーの熱伝導率について整理された研究では、PVCは約0.14~0.17 W/(m・K)、LDPEは約0.32~0.40 W/(m・K)、HDPEは約0.38~0.51 W/(m・K)という値が示されています。したがって同じ厚みで比較すれば、PVCはPEより熱を伝えにくい傾向があります。ポリマーの熱伝導率に関する研究データ

ただし、熱伝導率はあくまでも「その材料の内部をどれだけ熱が移動するか」を示したものです。シートを通過した熱がその後どのように周囲へ移動するかまでは、この数値だけでは分かりません。

また、実際にシートがどの程度熱を通しにくいかを比較する場合には、熱伝導率だけでなく厚みも考慮する必要があります。平板を厚み方向へ熱が流れる単純なモデルでは、材料の熱抵抗Rは次の式で表されます。

熱抵抗 R = 厚み d ÷ 熱伝導率 λ

d:材料の厚み(m)
λ:熱伝導率(W/(m・K))
R:熱抵抗(m²K/W)

つまり、同じ材料なら厚いほど熱抵抗は大きくなります。一方で、熱伝導率が低い材料でも極端に薄ければ、材料としての熱抵抗は小さくなります。

熱を帯びたシートから周囲へ伝わる熱は「輻射」も関係する

例えば暖かい空間と冷たい空間をPVCカーテンで仕切った場合、暖かい側からPVCへ熱が伝わり、シート表面の温度が上昇します。

その熱は反対側の空気へ対流によって伝わるだけでなく、シート表面から赤外線として周囲へ放射されます。これが輻射(放射)による熱移動です。

放射熱交換の大きさには、表面温度だけでなく放射率(emissivity)が関係します。NISTでも、分光放射率は放射熱伝達や熱収支を決定する重要な物性として測定されています。NISTによる材料の分光放射率測定

熱放射の基本式は、絶対温度Tに対して放射エネルギーが概ねTの4乗に比例するステファン・ボルツマンの関係で表されます。

放射熱流束の基本形

q ≈ εσT4

ε:表面の放射率
σ:ステファン・ボルツマン定数
T:絶対温度(K)

つまり、同じ素材であっても表面温度が高くなれば周囲へ放射する熱は増加します。また表面の色、配合、コーティングなどによって赤外線領域での光学特性が異なる場合があります。

NISTのポリマーに関する研究でも、PVCを含むポリマーについて赤外線の吸収・反射・透過特性が測定されており、ポリマーの放射特性は厚みや材料状態によって変化することが確認されています。NISTによるポリマーの赤外線吸収・反射研究

熱伝導率だけで「断熱性能」を判断できない理由

実際の間仕切りでは、次の3つが同時に起きています。

熱移動 何が起きているか 間仕切りでの対策
熱伝導 シートそのものを通って熱が移動する 低熱伝導率材料、厚み、空気層
対流 暖かい空気・冷たい空気そのものが移動する カーテンで空間を仕切る、隙間を減らす
輻射 高温面から赤外線として熱が伝わる 表面温度、放射率、反射・遮熱層などを検討

この3つを分けて考えると、「熱伝導率が少し低いシートへ交換すれば工場が涼しくなる」という単純な話ではないことが分かります。

特に間仕切りカーテンでは、シートそのものを通過する熱だけでなく、空調された空気と非空調空間の空気が直接入れ替わることを防ぐ効果が重要になる場面が多くあります。

軟質塩ビと硬質塩ビの物性の違い

軟質塩ビ・硬質塩ビ・糸入りビニール・帆布の材料構造比較

可塑剤による柔軟性と熱的挙動への影響

PVCは、可塑剤や充填材、安定剤、顔料などの配合によって物性が変化します。特にビニールカーテンなどに使用される軟質PVCでは、可塑剤を配合することで柔軟性を持たせています。

そのため「PVCの熱伝導率は必ず0.16 W/(m・K)」という意味ではありません。0.14~0.17 W/(m・K)程度は比較用の代表値であり、実際の製品では配合や密度、温度などによって変動します。ポリマー物性の比較データ

耐熱性が高いことと、熱を伝えにくいことは別の性能

シート材料を選ぶ際に混同しやすいのが、「耐熱性」と「熱伝導率」です。

耐熱性は、高温環境でも材料が軟化・変形・劣化しにくく、使用できるかを示す性能です。一方の熱伝導率は、材料内部を熱がどの程度移動しやすいかを表しています。

例えばシリコーンゴムは、高温環境で使用される代表的な材料です。しかし「高温でも使用できる」ということと、「熱を伝えにくい」ということは同じ意味ではありません。

反対にPVCはシリコーンほど高温用途には向きませんが、一般的な材料物性としては比較的低い熱伝導率を持っています。

高温設備や熱源周辺でシートを選定する場合には、

  • 何℃まで材料として使用できるかという耐熱性
  • 材料内部をどの程度熱が通過するかという熱伝導率
  • 熱を受けた表面からどの程度輻射するか

を分けて考える必要があります。

耐熱温度が高い材料ほど断熱性能も高い、という関係ではありません。熱源周辺では「高温でも使えるか」と「熱をどれだけ伝えるか」を別々に確認する必要があります。

PEシートやシリコーンシートでは熱の伝わり方はどう違うのか

素材そのものの熱伝導率を比較すると、樹脂の種類によって差があります。

一般的なポリマーの物性を整理した研究では、PVCは約0.14~0.17 W/(m・K)、LDPEは約0.32~0.40 W/(m・K)、HDPEは約0.38~0.51 W/(m・K)程度の値が示されています。ポリマーの熱伝導率に関する研究データ

同じ厚みだけを比較すれば、PVCはPEより熱を伝えにくい傾向があります。しかし実際のシートでは、密度、配合、厚み、発泡の有無、補強材などによって性能が変わります。

したがって、「PVCだから断熱性が高い」「PEだから低い」という素材名だけで判断するのではなく、実際の製品構造まで含めて考える必要があります。

綿帆布のような繊維材料は「繊維+空気」で考える

綿帆布のような織物は、PVCシートのような均一な樹脂層とは構造が異なります。

糸と糸の間や繊維内部に空気を含むため、見かけの熱伝導率は繊維そのものの物性だけでは決まりません。

織物の熱伝導に関する研究でも、繊維体積率などが布の熱伝導性に影響することが確認されています。J-STAGE「絹及び他の繊維素材布の熱伝導性」

そのためPVC、PE、綿帆布などを比較するときには、単純な素材そのものの熱伝導率だけでなく、製品内部にどの程度の空気を含む構造なのかも重要になります。

糸入りビニールのポリエステル糸はどの程度影響するのか

糸入りビニールは、軟質PVCの中へポリエステル糸などの補強材を配置した複合材料です。厳密にはPVC単体の熱伝導率だけでは材料全体を表せません。

複合材料の実効熱伝導率は、それぞれの材料の熱伝導率だけでなく、体積率、配置方向、熱流方向、界面状態によって変化します。そのため「ポリエステル糸が入っているから熱伝導率が○%上がる」と一律には示せません。

一般的な糸入りビニールでは、補強糸は主に引張強度、引裂強度、寸法安定性を高めるために使用されます。シート面積の大半をPVCが占め、補強糸が厚み方向へ連続した熱伝導経路になるわけではないため、断熱性能への影響よりも、機械的強度への影響の方が大きいと考える方が実務的です。

シートの厚み(0.3mm・0.5mm)がもたらす影響と限界

塩ビシートの厚みと空気層による熱抵抗の比較

0.3mmと0.5mmでは材料熱抵抗に差がある

PVCの熱伝導率を比較用として0.16 W/(m・K)と仮定します。

PVC厚 熱抵抗 R 0.3mm比
0.3mm 約0.00188 m²K/W 1.00
0.5mm 約0.00313 m²K/W 約1.67
1.0mm 約0.00625 m²K/W 約3.33

つまり、同じPVCであれば0.5mmの材料熱抵抗は0.3mmより約67%大きくなります。

これは物理的に明確な差です。しかし、0.3mmも0.5mmも1mm未満の非常に薄い膜であるため、材料単体としての熱抵抗の絶対値はどちらも小さいことに注意が必要です。

それでも0.3mmの間仕切りカーテンに意味がある理由

ここは、シートの熱伝導率だけを見ていると誤解しやすい部分です。

例えば冬場に20℃の作業空間と、5℃の非空調空間が開口部でつながっているとします。カーテンがなければ、暖かい空気が外へ流出し、冷たい空気が室内へ流入します。

この状態では「PVCを何mm通って熱が伝わるか」以前に、温度の異なる空気そのものが移動して大量の熱を運んでいることになります。

そこで0.3mmのビニールカーテンを設置すると、薄いシートであっても空気の直接的な移動を大きく制限できます。

つまり、間仕切りとしての効果は、

  • 0.3mmのPVCそのものが持つ材料熱抵抗
  • 暖気と冷気を物理的に分離する効果

の両方で考える必要があります。

実務上の考え方
0.3mmだから断熱できないということではありません。間仕切りカーテンとしては、必要な強度を確保しながら開口部をきちんと仕切り、空気の出入りを抑えられるかどうかの方が重要になる場合があります。

そのため、風圧やカーテン寸法、使用頻度などの条件で0.3mmが使用可能な現場であれば、断熱材としてではなく「空調空気を区画する間仕切り」として十分に意味があります。

同じ1mmでも「PVCだけ」と「空気を挟む構造」では違う

ここからは、空気層の意味を理解するための理論モデルです。

全体厚みを1.0mmとして、次の2つを比較します。

  • ケースA:PVC 1.0mm
  • ケースB:PVC 0.3mm+静止空気0.4mm+PVC 0.3mm

空気の熱伝導率には、NISTが300K付近で示している0.0264 W/(m・K)を使用します。NIST「Thermal Conductivity of Gases」

構造 熱抵抗
PVC 1.0mm 約0.00625 m²K/W
PVC 0.3mm 約0.00188 m²K/W
空気 0.4mm 約0.01515 m²K/W
PVC 0.3mm 約0.00188 m²K/W
PVC+空気+PVC 合計 約0.01890 m²K/W

熱伝導だけを考えた理想モデルでは、空気層を含む構造は1mm PVC単層の約3.02倍の熱抵抗になります。

同じ熱抵抗をPVC単層だけで得ようとすると、計算上は約3.02mm厚のPVCが必要です。

この比較から分かるのは、樹脂を単純に厚くするだけでなく、熱伝導率の低い空気を構造の中へ保持することが熱伝導を抑えるうえで非常に有効ということです。

ただし、この約3.02倍は「空気が完全に静止し、対流・輻射・端部からの空気移動・シート表面の熱伝達を無視した場合」の理論値です。実際の二重カーテンがそのまま3.02倍の断熱性能になるという意味ではありません。

1mmを3分の1ずつに分けた場合でも空気層の影響は大きい

0.3mm PVC+0.4mm空気+0.3mm PVCという構成だけではなく、より単純な仮説として、全体1.0mmをPVC・空気・PVCへ3分の1ずつ分けた場合も考えてみます。

PVCを0.16 W/(m・K)、空気を0.0264 W/(m・K)として、各層を約0.333mmとすると、理論上の熱抵抗は次のようになります。

構造 厚み 熱抵抗
PVC 約0.333mm 約0.00208 m²K/W
静止空気 約0.333mm 約0.01263 m²K/W
PVC 約0.333mm 約0.00208 m²K/W
合計 約1.0mm 約0.01679 m²K/W

1.0mm PVC単層の約0.00625 m²K/Wに対し、この仮想構造では約0.01679 m²K/Wとなります。

つまり、熱伝導だけを比較した理想条件では、1mmを3分の1ずつPVC・空気・PVCにした構造でも、1mm PVC単層の約2.69倍の熱抵抗になります。

0.3+0.4+0.3mmの場合より数値が少し低くなるのは、熱伝導率の低い空気が占める割合が小さくなるためです。

空気層を含む1mm構造をPVC1枚で再現すると約3mm必要になる

先ほどの「0.3mm PVC+0.4mm空気+0.3mm PVC」の理論熱抵抗は約0.01890 m²K/Wでした。

これと同じ熱抵抗を、熱伝導率0.16 W/(m・K)のPVC単層だけで得ようとすると、必要厚みは次のようになります。

必要なPVC厚み = 熱抵抗 × PVCの熱伝導率

0.01890 × 0.16 = 約0.00302m

= 約3.02mm

つまり、熱伝導だけを比較した理想モデルでは、全体厚み1mmの「0.3mm PVC+0.4mm空気+0.3mm PVC」と同じ熱抵抗をPVC1枚だけで得るには、約3mmの厚みが必要になります。

これは「空気層を設ければ必ず実際の断熱性能が3倍になる」という意味ではありませんが、PVCをわずかに厚くすることと、熱伝導率の低い空気を構造内部に保持することでは、熱伝導に対する影響が大きく異なることを理解するための比較になります。

同じPVCでも発泡させると熱伝導率が下がる

空気を利用する考え方は、二重シートだけではありません。同じPVCでも、材料内部を発泡させて多数の気泡を持たせると、材料全体としての熱伝導率を下げることができます。

NISTが公開しているPVCフォームの物性データでも、低密度の発泡PVCは非発泡PVCより低い熱伝導率を示しています。NIST「Material Properties: PVC」

これはPVCそのものの化学的な熱伝導率が突然大きく下がったというより、材料内部へ熱伝導率の低い気体を細かなセルとして保持することで、材料全体としての実効熱伝導率が低下するためです。

発泡ポリエチレン、発泡ウレタン、発泡スチロールなどの断熱材料も、基本的には内部に保持した気体を利用しています。

つまり断熱性能を高めるうえでは、「どの樹脂を使用するか」だけではなく、内部へどの程度の空気やガスを保持し、それをどれだけ動きにくい状態にできるかも重要になります。

空気層があってもシート表面からの輻射は残る

空気層の熱伝導率が低くても、2枚のPVCシートの間では赤外線による放射熱交換が起こります。

つまり「空気は熱を伝えにくいから、空気層さえ入れれば熱はほとんど通らない」というわけではありません。

暖かい側のPVC表面温度が上昇すれば、その表面から反対側のシートへ熱放射が起こります。NISTの材料データでも、PVCを含むポリマーについて赤外線領域の放射・吸収特性が研究されています。NISTの材料光学特性レビュー

したがって実際の断熱構造では、

  • 固体を通る熱伝導
  • 空気層内部の熱伝導・対流
  • シート面同士の輻射

を合わせて評価する必要があります。

輻射熱を防ぐことと熱伝導を切り分ける考え方

塩ビカーテンを通る熱伝導・対流・輻射の流れ

一枚のシートを境にしても熱移動は止まらない

例えば暖房された空間と寒い空間の間へPVCカーテンを設置すると、暖かい空気からシート表面へ熱が移動します。

その後、熱はPVC内部を熱伝導によって反対面へ移動し、反対面から周囲の空気へ対流や輻射によって移動します。

したがってカーテンは「熱を完全に止める壁」ではありません。

それでもカーテンを設置する意味があるのは、空気そのものが大量に移動して熱を運ぶ経路を遮断できるからです。

間仕切りカーテンでは「熱を通さない」より「空気を通さない」効果が重要になることもある

工場や倉庫では、人やフォークリフトが通る大きな開口部が設けられている場合があります。この開口が常時開放されていれば、暖房・冷房された空気が外部空間と直接混ざります。

この状態に0.3mmのPVCカーテンを取り付ければ、材料熱抵抗自体は小さくても、空気の直接的な交換を抑えることができます。

そのため間仕切り用途では、「0.3mmより0.5mmの方が断熱性が高いから0.5mmを選ぶ」と単純に考えるのではなく、

  • 0.3mmで必要強度を満たせるか
  • 裾や側部の隙間を小さくできるか
  • 開閉しやすく、実際に閉めた状態を維持できるか
  • 風圧で大きくめくれないか

といった条件を見る方が、実際の省エネ効果につながることがあります。

シートが厚すぎて重くなり、人が開けたままにしてしまうのであれば、材料熱抵抗が高くても間仕切りとしては逆効果になる可能性があります。間仕切りカーテンは、材料性能だけでなく「実際に空間を仕切り続けられるか」まで含めて考えることが重要です。

空間の仕切りと空気層を活用した断熱の工夫

開放状態・単層カーテン・二重カーテンによる空気移動と熱移動の違い

まず「開放空間を仕切る」だけでも意味がある

断熱対策を考えると、厚い断熱材や二重構造に目が向きがちですが、工場の間仕切りではまず空気の流れを物理的に遮ることに大きな意味があります。

0.3mmのPVCシート自体に建築用断熱材のような高い熱抵抗はありません。しかし、何もない開口部と比較すれば、暖気・冷気が直接行き来する経路を遮断できます。

その上で、さらに熱移動を抑えたい場合に、0.5mmへの厚み変更や二重化、空気層、遮熱層などを検討するという順番が合理的です。

なぜ「空気を入れる」だけでなく「空気を動かさない」ことが重要なのか

空気は300K付近で約0.0264 W/(m・K)と、PVCなどの固体樹脂よりも熱伝導率が低い物質です。NIST「Thermal Conductivity of Gases」

しかし空気層は、厚くすればするほど無条件に断熱性能が上がるわけではありません。空間が広くなって内部の空気が動き始めれば、自然対流によって熱が運ばれるようになるためです。

そのため、断熱構造では単に空気を入れるのではなく、熱伝導率の低い空気を、できるだけ動きにくい状態で保持することが重要になります。

発泡材が微細な気泡を多数形成しているのも、この考え方によるものです。大きな空間を一つ作るのではなく、小さなセルの中へ気体を閉じ込めることで、大規模な対流を起こしにくくしています。

二重化では熱伝導だけでなく輻射まで考える

二重カーテンの間に静止空気層を作れば、熱伝導だけを考えれば大きく熱抵抗を増やせます。

一方で、シート面同士の輻射熱交換は残ります。したがって、本格的な断熱材では空気層だけでなく、低放射率表面や反射層などを組み合わせて放射熱移動を抑える方法も用いられます。

つまり、断熱構造をより高度に考える場合は、「熱伝導率の低い空気を入れる」「空気を動かさない」「面同士の輻射を抑える」という3つの視点が必要になります。

よくあるご質問

0.3mmのビニールカーテンでも暑さ・寒さ対策になりますか?

はい。0.3mmのPVCシート単体には建築用断熱材のような高い熱抵抗はありませんが、間仕切りとして暖気と冷気の直接的な移動を抑える効果があります。必要な強度が確保でき、側部や裾の隙間を適切に処理できる現場であれば、0.3mmでも空調区画を作る間仕切りとして十分に役割を果たします。

0.3mmより0.5mmの方が断熱効果は高いですか?

材料熱抵抗だけを比較すれば、同じPVCの場合0.5mmは0.3mmより約67%高くなります。ただし両方とも非常に薄いシートであるため、現場全体の熱対策では、厚み差よりも隙間、空気移動、開閉状態、輻射などの影響が大きくなる場合があります。

塩ビシートの耐熱温度は何度ですか?

一般的な軟質塩ビシートは、高温になるほど軟化しやすくなるため、高温設備の直近などで使用する場合には注意が必要です。

ただし「耐熱温度」はPVCという素材名だけで一律に決まるものではなく、可塑剤、安定剤、補強材などの配合、使用時間、荷重、周囲環境によって異なります。そのため、具体的な高温環境で使用する場合は製品ごとの使用温度範囲を確認する必要があります。

また、耐熱温度が高いことと断熱性が高いことは別の性能です。高温環境では「その温度で材料として使用できるか」と「どの程度熱を伝えるか」を分けて判断します。

シリコーンシートは耐熱性が高いので断熱性も高いですか?

必ずしもそうではありません。シリコーンゴムは高温環境で使用しやすい材料ですが、耐熱性は高温でも材料として機能を維持できる性能を示すもので、熱伝導率とは別の物性です。

「何℃まで使えるか」と「どれだけ熱を通すか」は別々に確認する必要があります。

糸入りビニールは透明ビニールより断熱性が高いですか?

ポリエステル補強糸を含むため厳密には複合材料ですが、糸の体積率や配置などが分からなければ実効熱伝導率を一律には算出できません。

一般的な糸入りビニールでは、補強糸の主な役割は引張強度や引裂強度、寸法安定性を高めることです。糸が入っていることだけを理由に、大幅な断熱性能向上を期待するものではありません。

発泡PVCは通常のPVCより断熱性が高いですか?

一般的には高くなります。PVC内部へ気泡を形成すると、熱伝導率の低い気体が材料内部に取り込まれるため、材料全体としての実効熱伝導率を低下させることができます。

ただし性能は、発泡倍率、密度、セルの大きさ、独立気泡率などによって変化します。NISTによるPVCフォームの熱物性データ

シートが暖まれば反対側にも熱を放射しますか?

はい。シート表面の温度が上昇すると、周囲へ赤外線として熱を放射します。その量は表面温度と放射率などによって変わります。

したがって、シートを通過する熱伝導だけでなく、暖まった表面からの輻射熱交換も実際の熱移動には含まれます。

二重カーテンにすると単純に3倍断熱できますか?

いいえ。0.3mm PVC+0.4mm静止空気+0.3mm PVCという理論モデルでは、熱伝導だけを計算すると1mm PVC単層の約3倍の熱抵抗になります。

しかし実際には空気の対流、シート面同士の輻射、端部からの空気移動、表面熱伝達などがあるため、実際の断熱性能が3倍になるという意味ではありません。

空気層を含む1mm構造と同じ熱抵抗をPVC1枚で得るには何mm必要ですか?

PVCの熱伝導率を0.16 W/(m・K)、空気を0.0264 W/(m・K)とした理想的な一次元熱伝導モデルでは、「0.3mm PVC+0.4mm静止空気+0.3mm PVC」の熱抵抗は約0.01890 m²K/Wです。

これと同じ熱抵抗をPVC単層だけで得ようとすると、計算上は約3.02mmの厚みが必要になります。

ただし、これは空気層内部の対流やシート面同士の輻射などを除外した理論比較です。

まとめ

塩ビシートの熱特性を見るときは、「熱伝導率が何W/(m・K)か」だけで判断しないことが重要です。

熱伝導率は、その材料そのものの内部を熱がどれだけ移動しやすいかを示します。しかし、実際の間仕切りでは、シートへ伝わった熱が反対面から空気へ移動し、さらに表面から輻射熱として周囲へ放射されます。

その一方で、間仕切りカーテンの大きな役割は、暖かい空気と冷たい空気が直接行き来することを防ぐことです。

そのため0.3mmのPVCシートであっても、必要な強度があり、開口部を適切に仕切ることができれば、空調された空気を区画する間仕切りとして十分な効果があります。

0.5mmへ厚くすれば材料熱抵抗は増えます。さらに二重化して空気層を設ければ、熱伝導だけを考えればより大きな熱抵抗を得られます。

例えば「0.3mm PVC+0.4mm静止空気+0.3mm PVC」という全体厚み1mmの理論モデルでは、1mm PVC単層の約3.02倍の熱抵抗となり、同等の熱抵抗をPVC一枚だけで得ようとすると約3.02mmの厚みが必要になります。

また、同じPVCでも発泡させて内部へ多数の気泡を形成すると、熱伝導率の低い気体を材料内部に保持できるため、材料全体の実効熱伝導率を下げることができます。

ただし、実際の熱移動には熱伝導だけではなく、空気の対流、隙間からの流入、シート表面からの輻射、表面熱伝達なども含まれます。

つまり、間仕切りカーテンの熱対策は「どの素材を何mm使うか」だけではなく、「空気をどう仕切るか」「空気をどう保持するか」「輻射をどう扱うか」まで含めて考えることが重要です。

間仕切りカーテンの熱対策で確認するポイント
  • 熱伝導率は「材料そのものを熱が通る性能」として見る
  • 実際の厚みを含めた比較では熱抵抗を見る
  • 耐熱性と熱伝導率は別の性能として考える
  • 暖まったシートからの輻射熱も別の熱移動として考える
  • 間仕切り用途では、暖気・冷気の直接的な移動を止めることが重要
  • 0.3mmでも必要強度と納まりを満たせば、間仕切りとして十分に意味がある
  • 厚くする場合は断熱性だけでなく強度・重量・開閉性とのバランスで判断する
  • 発泡材では内部に保持された気体が実効熱伝導率へ大きく影響する
  • 二重化では空気層による熱伝導低減だけでなく、対流・輻射も考慮する
株式会社 星野商店

この記事の監修・執筆

株式会社 星野商店

産業用繊維資材の卸売をはじめ、加工製品の製造から現場施工までをトータルに手掛ける専門企業です。「全従業員の幸福のため、産業用資材をご利用していただくお客様のために、品質・利便性・迅速を追求し、安心をお届けする」という理念のもと、長年培ってきた専門的な知見と確かな技術力で、現場のあらゆる課題解決をサポートします。

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